自分と深く関わりのある街に立って見えたこと、感じたこと。

甚大な被害を受けた中 災害の研究・調査を開始

東北大学総長 里見 進氏

東北大学総長 里見 進氏

東日本大震災と福島第1原子力発電所事故による広範囲な被災地の中に、東北大学は位置する。震災発生時は春休みだったこともあり、学内での人的被害は免れたが、自宅などでは3人(1人は入学予定者)の学生の命が奪われた。28棟の建物に深刻な被害を受けるなど、物的損失も甚大だ。特に青葉山キャンパスにある工学部や星陵キャンパスにある医学部では、建物と共に多くの重要な精密機器が破壊された。試算の仕方にもよるが、被害総額は600億~800億円に上るという。

「研究に大きな影響が出ると懸念されましたが、国からの助成もあり、復旧作業は急ピッチで進んでいます。現在、教育機能は復旧し、研究機能もほぼ復旧というところまでこぎ着けています」

発災後間もなく、東北大学は「防災科学研究拠点」などが調査・研究活動を開始し、昨年4月には「東北大学災害復興新生研究機構」を設立した。同機構は各部局による復興に向けた研究を、より組織的かつ戦略的に実践するための学術横断的な組織だ。

「この時代に大学は何ができるのか、という視点で教職員からアイデアを募集しました。結果、教職員が自発的に取り組む復興アクションは現在、約180種にもなっています。これらの取り組みをより効果的に実践するために、8つのプロジェクトにまとめました。既に動き始めているプロジェクトもあります」

災害科学研究から復興事業まで大学ができる実際的な取り組み

8つのプロジェクトは、「実学尊重」の校風が色濃く反映された非常に実際的な取り組みであることが分かる。そのいくつかに注目してみよう。「災害科学国際研究推進プロジェクト」は、“低頻度巨大災害”への対策・危機対応を目的にしたプロジェクトだ。その拠点として、学際的に災害科学を研究する拠点としては世界初とも言える「災害科学国際研究所」を設立した。理系の研究者だけでなく、経済学・社会学・心理学など文系の教員ら総勢約70人のスタッフから成り、今後80人以上に増員する予定。国内外30以上の大学・研究機関と連携し、新たな広域・巨大災害への備えを先導していく考えだ。

東北大学災害復興新生研究機構

「自然災害科学研究は、事前対策から災害発生、緊急対応、復旧・復興、将来への備えを一連のサイクルとして捉え、各プロセスにおける研究を教訓として一般化しなければいけません。災害科学国際研究所は東日本大震災における調査・研究や復興事業への取り組みから得られる知見を“実践的防災学”として体系化することをミッションとしています」

「地域医療再構築プロジェクト」も画期的だ。その目玉は「東北メディカル・メガバンク機構」の設置である。同機構は被災した沿岸部の医療機関を復興し、津波でカルテを流された教訓から強固な情報通信システムの整備を目指す。さらに、「複合バイオバンク事業」を推進する。

「東北地方には3世代で同居している家族が多くいます。患者さんの医療情報と共に3世代の遺伝子情報を集積し、データベース化することで、疾患の遺伝子や原因を探り、新たな診断・治療法を模索していきます。地域医療を近代化、再生しながら新しい医療を展開し、将来的には医療機器の開発や創薬など新たな産業を生み出していくことを目的としています」

被災地の復興にはより強固な産学連携が不可欠

「地域産業復興支援プロジェクト」はイノベーションを誘発する革新的なプロデューサーの育成を目指す。また、「復興産学連携推進プロジェクト」は産業基盤の革新・強化のために東北大学のシーズを活用し、被災地の地域経済の復興に貢献するものだ。これらの実現のためには、産学連携をより強化し、大学と企業の人材交流などをより活発化させる必要があると里見総長は話す。

「企業が大学に入り“こんな素養を身につけよ”と積極的に情報発信してほしい。これからは企業の方に講義していただく機会を増やし、インターンシップも充実させていきたい。大学と企業のより密な関係を構築し、そこから生まれる双方に有効な化学変化を期待したいです」

復興において東北大学が持つポテンシャルに期待する声は多い。今、大学として学生には何を望んでいるのだろうか。

「新入生は震災後初めての受験で入ってきました。彼らは歴史の中の必然で東北大学の学生になりました。震災をしっかりと受け止め、何のために学ぶのかを常に自分へ問いかけてほしい。被災地での課題を引き受け、解決する義務があると感じながら勉学にいそしみ、青春を謳歌してほしいです」

次世代を担う人材を育て、東北発科学技術イノベーションを実現するためには、企業の協力が不可欠だ。里見総長は人材育成の考え方について、企業側にも意識の変革を求めていきたいと考える。

「ドクターコース(博士課程)は視野が狭まるという理由で、企業はマスターコース(修士課程)の学生を採用したがる傾向があります。しかし、世界的にはドクターになった人が経済の一線で活躍しています。これからはドクターレベルの知識を身につけた学生を企業人としてきっちりと育て上げる文化に変わっていく必要があると思います」

学生が地元に就職し定住することで、より効果的な復興が可能になると里見総長。大学が雇用を生み出すことは難しいが、知の創造と集積を生かし、企業と連携して雇用機会を拡大し、地元の産業発展に貢献することはできる。

「震災前から日本経済は元気を失いつつありました。この復興を前向きに捉え、被災地はもちろん日本全体が元気を取り戻す契機にしなければならない。そこに貢献することが、東北大学の責務だと考えています」

このコンテンツは日経BP社「シリーズ 復興大全」とのコラボレーションによるものです。

3.11復興支援情報サイト 助けあいジャパン 更新停止のご挨拶

サイト「助けあいジャパン」更新停止のお知らせとお願い
いつも「助けあいジャパン」の活動にご理解とご協力をありがとうございます。
私たち「助けあいジャパン」は東日本大震災の発災後いち早くサイトを立ち上げ、いままで情報支援活動・ボランティア支援活動を、プロボノの方々をはじめたくさんの方々のご協力のもと行ってまいりました。
震災から5年半、地道に更新を続けてまいりましたが、このたび、情報支援サイトとしてある一定の役割を終えたと判断し、サイト「助けあいジャパン」の更新をいったん停止させていただこうと思います。
いままでご協力いただいた方々、応援してくださった方々、情報をくださった方々、そして私たちのサイトを見て東北に行ってくださった方々、本当にありがとうございました。
情報支援サイトの更新はいったん停止いたしますが、支援活動に終わりはありません。これからもフェーズに合わせた支援活動を続けていきたいと思っております。
なお、熊本地震では「いまできること」(http://imadekirukoto.jp/)というサイトを運営し、情報支援活動を続けております。
今後、ボランティア・ニーズが起こるような大規模災害において「いまできること」サイトを中心に支援活動を行ってまいります。
これからも「助けあいジャパン」をよろしくお願いいたします。

代表理事 石川淳哉・佐藤尚之