渡辺パイプ呼びかけのもとに「ライフライン・ネット」を設立 災害時速やかに資材供給

渡辺パイプのトラックが毎日被災地へ緊急対応資材を運び続けた

主に地中で使われる配水・給水用の資材をはじめ、住まいに関わる管工機材、建築資材、電設資材、住設機器などをワンストップで届ける渡辺パイプ株式会社。3.11以降、災害時ネットワークの仕組みを生かし、ライフライン復旧のための資材を供給し続けた。

重要なライフラインである水道の資材を供給する業界大手

震災の翌朝には石巻市へ自らトラックで向かい、状況把握を図った、東日本支社 支社長の荒井茂幸氏

震災の翌朝には石巻市へ自らトラックで向かい、状況把握を図った、東日本支社 支社長の荒井茂幸氏

渡辺パイプ株式会社は、全国に約260カ所の拠点を構え、2,000社以上のメーカー・協力企業とネットワークを構築している。顧客は30,000社を超える業界有数の企業である。

昨年3月11日、仙台市若林区にある仙台サービスセンターは社屋と設備に大きな被害を受け、停電の中で情報が寸断された。即座に社員とその家族の安否確認を開始。夜が明けても連絡がまったくつかない石巻サービスセンターについては、東日本支社長の荒井茂幸氏と北東北地区開発部長の相澤洋氏が早朝にトラックで現地に向かい、状況の把握に努めた。

「まさかこんなことになっているとは…と絶句しました」と荒井氏は当時を振り返る。海岸から約800mに位置する事務所と倉庫は津波にのまれ、まだ膝まで海水に浸かっている惨状。避難所を回って社員の捜索にあたった結果、全員の無事が確認されたが、その7割が自宅を流されるという甚大な被害も見えてきた。

その石巻サービスセンターには、12日から工事会社が材料を求めてやってきた。社員は泥の中から使える資材を探し出し、それを洗浄して受け渡す作業に没頭した。一方、仙台サービスセンターには、12日朝に各地から10トン車7台、4トン車4台分の緊急対応資材が届いた。渡辺パイプが主催する災害復旧支援システム「ライフライン・ネット」の会員メーカーが、迅速に対応した結果だ。

  • 仙台サービスセンターの敷地には、震災発生の翌日からライフライン復旧のための緊急対応資材が大量に運び込まれた。アイテム数は3,000にもおよぶ。

    仙台サービスセンターの敷地には、震災発生の翌日からライフライン復旧のための緊急対応資材が大量に運び込まれた。アイテム数は3,000にもおよぶ。

  • 石巻サービスセンターでは、津波をかぶった資材をきれいにし、緊急用として工事会社に提供した。

    石巻サービスセンターでは、津波をかぶった資材をきれいにし、緊急用として工事会社に提供した。

災害復旧支援システムを生かし資材供給に社員が一丸となる

「水は生命にかかわる、まさにライフライン。だからこそ、一刻も早い復旧へ無我夢中で動きました」と語る北東北地区開発部部長の相澤洋氏

「水は生命にかかわる、まさにライフライン。だからこそ、一刻も早い復旧へ無我夢中で動きました」と語る北東北地区開発部部長の相澤洋氏

「ライフライン・ネット」は2004年に発生した新潟県中越地震を契機に、渡辺パイプが設立を呼びかけたネットワークだ。災害発生時に水を確保するための資材を速やかに供給する体制の構築を目的としてメーカー各社と約1年をかけて協議し、2006年に賛同企業5社と正式発足に合せて、「災害復旧支援マニュアル」を作り上げた。

その後、全国に17,000あまりの水道工事業者を擁する中央団体、全国管工事業協同組合連合会( 会長 大澤規郎氏)の賛同を得て、同社をはじめとする資材商社、建設機械レンタル会社など数社が、2009年に同連合会と「災害時における応急復旧の応援協力に係わる覚書」の調印に至っていた。同連合会は全国の地元組合と連携し、ライフラインの最も基本である水道を支える組織。この度の東日本大震災では、被災地の水道復旧工事に延べ3,745日、52,466名が応急復旧応援を行った。有事の水道復旧には欠かせない存在だ。

東日本大震災発生後、「ライフライン・ネット」は事前の取り決めに従って下記のフローのように機能した。仙台サービスセンターには被災地対策室が設けられ、構内は協力メーカーの現地資材置き場となって緊急応急資材が次々と運び込まれた。40名を超える社員は自らも被災者であるにもかかわらず、水道復旧の基地となった同センターに詰めて対応にあたった。問い合わせは通常の10倍以上、続々と工事会社が訪れ、24時間対応するために毎晩6名ほどの社員が泊まり込んだ。

フローチャート

ライフライン・ネットとは

渡辺パイプの全国のネットワークに加え、賛同メーカーと連動して資材を集中させ、素早く効率的に供給していく。さらに、全国管工事業共同組合連合会とも協力し合い、効果的な復旧支援を目指す。

「毎日食糧を集め、炊き出しをし、夜は段ボールで寝るような生活が1カ月続きました。目の前のことをこなすだけで1日があっという間に過ぎていく。“今、ここでがんばらなければ”という強い気持ちで、社員が一丸となって過ごした1カ月でした」と荒井氏は話す。

「私たち自身も水の重要性にあらためて気づかされました」と話すのは相澤氏。「水は被災者の生命にかかわるものであり、被災地の復旧・復興のための礎となるライフラインです。水の事業に携わる者として、被災地に少しでも早く水を出したいという強い気持ちが社員全員にあったと思います」(相澤氏)

「ライフライン・ネット」の重要性と課題が浮かび上がる

「自治体や管工事組合、メーカーと密にコミュニケーションを取り、緊急時にすぐ対応を図りたい」と語るライフライン開発部 部長の古谷龍雄氏

「自治体や管工事組合、メーカーと密にコミュニケーションを取り、緊急時にすぐ対応を図りたい」と語るライフライン開発部 部長の古谷龍雄氏

石巻サービスセンターへは、ハブ供給所となった仙台サービスセンターから資材を毎日輸送し、現地社員は避難所から泥だらけの事務所に通って工事会社への供給を続けた。途切れても、つなげる。水道と同じように、供給の流れをつなぎ、決して止めてはならないという使命感がそこにはあった。

これほど速やかに資材供給できたのは、平常時に「ライフライン・ネット」の構築に力を注いできたがゆえである。

「マニュアルの存在によって現場が迷わずに行動できたことが評価される一方、問題点も浮かび上がった」と話すのは、「ライフライン・ネット」の責任者であるライフライン開発部の古谷龍雄部長。

「応急給水や応急復旧のための資材を、当社と各メーカーは過去の経験から推測して選定し輸送しましたが、結果的に大量に余った資材も散見されました。また、今回は地震よりも津波による被害が甚大であり、水道管の壊れ方も継手が外れる以外に管が津波で引きちぎられるケースが発生しました。災害の性質を見きわめることの重要性も再認識しました」と古谷氏は話す。東日本大震災の教訓を生かし、今後は各地の事業体、管工事組合、流通業者、メーカーの事前打ち合わせを密に行い、より強固かつ柔軟なネットワークを構築していく考えだ。

●お問い合わせ

渡辺パイプ株式会社

〒104-0045
東京都中央区築地5-6-10浜離宮パークサイドプレイス6F
TEL. 03-3549-3111(代)
http://www.sedia-system.co.jp/

このコンテンツは日経BP社「シリーズ 復興大全」とのコラボレーションによるものです。

3.11復興支援情報サイト 助けあいジャパン 更新停止のご挨拶

サイト「助けあいジャパン」更新停止のお知らせとお願い
いつも「助けあいジャパン」の活動にご理解とご協力をありがとうございます。
私たち「助けあいジャパン」は東日本大震災の発災後いち早くサイトを立ち上げ、いままで情報支援活動・ボランティア支援活動を、プロボノの方々をはじめたくさんの方々のご協力のもと行ってまいりました。
震災から5年半、地道に更新を続けてまいりましたが、このたび、情報支援サイトとしてある一定の役割を終えたと判断し、サイト「助けあいジャパン」の更新をいったん停止させていただこうと思います。
いままでご協力いただいた方々、応援してくださった方々、情報をくださった方々、そして私たちのサイトを見て東北に行ってくださった方々、本当にありがとうございました。
情報支援サイトの更新はいったん停止いたしますが、支援活動に終わりはありません。これからもフェーズに合わせた支援活動を続けていきたいと思っております。
なお、熊本地震では「いまできること」(http://imadekirukoto.jp/)というサイトを運営し、情報支援活動を続けております。
今後、ボランティア・ニーズが起こるような大規模災害において「いまできること」サイトを中心に支援活動を行ってまいります。
これからも「助けあいジャパン」をよろしくお願いいたします。

代表理事 石川淳哉・佐藤尚之